考えても見れば、人間が主体をもち、環境に個別的に対応することとは、人間が生きることそのものでもあるのだ。職人が減少するとともに、残った職人は大手ハウスメーカーの傘下に入ってしまった。かつて建て主からじかに仕事を受け、主体的に仕事にかかわり、誇りと責任に満ちた職人は段々と少なくなった。かつて個別的生産にかかわる人びとの顔は、より個性的でさえあったのに、職人は部品取り付け人と化し、物との主体的かかわりをなくしている。職人であるにもかかわらず、物をつくる喜びさえ喪失し始める。また、個別性の崩壊は人々がともに生きる喜びをも失わせる。話を先に戻すと、個別性は勝手気ままな解釈から生まれるものではなく、対象や周囲の力を受け入れることから生まれる。このようにして生まれる個別性や個性は、ある個人がつくるものだけにあるのではなく、地域の個性、ある時代の個性といったものにもあらわれる。個別性は地域の普遍的なものとしてもあるのだ。個別性と普遍性は表裏一体である。人間は個別性によって結び付けられ、そしてともに生きる喜びを共有することができた。しかし、そのような場の個性を失ってしまった現代は何と哀れな時代になってしまったのか。さらに、個別性は自由の問題でもある。「自由は認知することから始まる」と言われる。そのような意味で、個別性の獲得には、周囲の力の認知が自由の第一歩である。環境に対して個別的に対応するには、人間が全体的であること、主体的であること、自由であることと密接な関係がある。
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